和精油 クロモジ

古来から、日本の暮らしに息づいていた黒文字。
その香りは、爽やかさの中にあるスパイシーさ、さらに甘いウッディ感、そして優しい森林の香りを併せ持つ、穏やかな香りです。
クロモジの基本データ
学名 Lindera umbellata
”Lindera”は、スウェーデンの植物学者
”umbellatta”は、傘(umbrella)から来ていて、クロモジの黄色い花は傘が開くように咲く
原産地 日本 (固有種)
科名 クスノキ科
抽出部位 枝葉
抽出方法 水蒸気蒸留法
ノート ミドル
クロモジ(黒文字)は、日本の固有種で、細めの枝の落葉低木で、山間部の湿潤な土地を好みます。
枝を傷つけると、クロモジの香りがフワッと広がります。
”黒文字”の名の由来には諸説あります。
緑色の若い枝の黒い点々模様が、文字を書いたように見えることから黒文字となった説や、室町時代の宮中の女房言葉で、語尾に「モジ」をつける習慣があり、黒文字が黒い実をつけることから、黒文字となったという説があるようです。
クロモジとローズウッド
クロモジと同じ、クスノキ科のローズウッド。
一躍有名になったきっかけが、シャネルのNo.5という香水。
ローズウッドの、フローラルで甘い香りの成分であるリナロールを含む、No.5。
香りの世界に革命をもたらしたと言われ、これを機に、こぞってどのブランドもローズウッドに注目。
大量伐採につながり、絶滅を危惧され、ワシントン条約において、輸入出の禁止、アロマ抽出用の伐採も禁止されました。
さて、ここで同じ祖を持つクロモジ。
大陸が一つだった大昔、アマゾンから一部が北上し日本にたどり着いたクロモジ。
そこには針葉樹が占領していた。
ローズウッドのように大きく育つことは出来ず、細く小さくなり、柔らかい香りに進化してきたと言われています。
ローズウッドの主成分はリナロール(80〜90%)。
クロモジの主成分はリナロール(10〜60%)、リモネン、1,8-シネオール、α-ピネンなど。
そして、同じクスノキ科で、リナロールを多く含むクロモジは世界から注目され始めているのです。
クロモジの活用
歴史的文献から、クロモジは1000年前の平安時代から、屋敷の柴垣で使用されていたことは間違い無いでしょう。
「大嘗祭』(新しい天皇が即位後初めて行う特別な新嘗祭)の儀式に、クロモジの小柴垣に熱湯をかけて、その香りが広がる中、祝詞をあげることをされるようです。
そうなると、大嘗祭が始まった7世紀末頃から、そのようにクロモジは活用されていたと思われます。
何より、クロモジが有名になったのは、「黒文字楊枝」。
茶道の世界で、客人をもてなす菓子に添えられました。
黒文字の楊枝は、爽やかで上品な香りに加え、抗菌性も備えていたので、もてなしの心は楊枝一つにも宿っていたのでしょう。
江戸時代には、黒文字の先を細かく割いて歯ブラシとしたり、枝葉を香袋にしたりと使われていたようです。
その後は、枝葉を刻んで煎じて、胃腸の不調に飲んだり、煎汁で皮膚洗浄や虫刺されに使われていました。
現代の活用法
クロモジの効能が明らかになってきて、クロモジのスキンケア製品、くろもじ茶、クロモジ飴、クラフトジンやクラフト焼酎の材料に採用されたりと、人気は高まっています。
クロモジ茶は私も愛飲しておりまして、お茶として飲むのはもちろん、残った茶葉を精油を足して湯船に入れたりしています。
さらには最後は肥料としても使えるようで、無駄にならないのが魅力的です。
そして、精油が抽出されると、さらに活用場面は増えていきました。
芳香浴、アロマトリートメント、入浴などなど。
ただ、クロモジ精油は、なかなか高価なんですよね。
水蒸気蒸留法で抽出されるにですが、収油率がとても低く、また植林の困難さが希少性の一因になり、価格も高くなってしまうのかなと。
しかし、抽出時にできる芳香蒸留水は、手に入りやすい価格なので、おすすめです。
クロモジ精油のおすすめの使い方
クロモジの面白いところで、鎮静効果がある一方で、集中力を損なわないと証明されています。
鎮静作用はだいたい眠気も誘われちゃうんです。
心を落ち着かせたい時、集中したい時に芳香浴をおすすめします。
もちろん心がざわついて眠れない夜にも、使えますね。
抗菌作用、去痰作用、血行促進作用、皮膚軟化作用などあり、風邪のケア、肩こり、スキンケアや水虫のケアにも役立つと言われています。
なかなかの万能ぶり。
私はクロモジの芳香蒸留水はよく使います。化粧水として使ったり、頭皮ケアで頭皮にスプレーしたり、空気の清浄として空間にスプレーします。
くろもじ精油は高価なので、やはり特別な日やご褒美の日に使わせていただいてます。
仕事で緊張する事がある時、香りをインへーラーやスプレーで持ち歩いて、ここぞと思うときに、香りと一緒に深呼吸します。そして、よく頑張った日の夜や、時間のあるご褒美デイは、入浴時に使うことが多いです。
【参考文献】
・稲本正(2021).『日本の森のアロマ〜人と地球の未来を結ぶ〜』.世界文化社
